ぽにろぐ

パート主婦/中2ゲーム男子の母/ 夢は家族みんなが幸せでお金に困らない生活を送れること/おキャンプ研究部所属。PTAには入らない派。学校徴収金研究室。

PTAや同窓会の事務は教職員の仕事なの?公会計化のすすめ。

こんにちは、ぽにこです。

 

公立小中学校では、そろそろPTAの総会があり、学校徴収金や諸会費が集金される季節ですね。

 

個人的に学校徴収金を調べまくっている私としては、今年度の徴収金が知らされないままGWに突入したことに「だからそーゆートコ!(怒)」という思いを持ちつつ、年度はじめからロクに休めていないだろう学校現場を思うと、この学校徴収金問題をどう働きかけようか、悩ましく思うところです。

 

学校の教育活動に関わることだけで、結構な業務量だと思うのですが、その他の業務が多いのも学校の長時間労働の原因だと言われています。

そのうち、PTA会費の納入や付随する事務的作業、時にPTA活動そのものについて、ほとんどの学校で何かしら教職員が関わっていることが多くあります。

 

そんな中で、ふと、

「これって、教職員がすることなの?」

と思うこともあるかと思います。

 

それに同意を示してくれることはあっても、

「で、どうなの?」

という答えは出ない。

 

本当のところ、分かんないんですよね。

おかしいと思いながら。

 

結論を先に言うと、

PTAや同窓会など任意団体の事務は教職員の仕事ではありません

 

ただ、「教職員の仕事ではない」とはいえ、実態は校長の指示のもと先生たちは動かれていると思いますので、勇気のある教職員や良好な職場環境なら、ご自身で交渉したり、業務整理の提案をしてみるのはアリだと思います。

だって、法令に基づく取り扱いをしようと思ったら、PTA等外郭団体の事務を代行するようなことは引っかかりまくりなんですよ。

 

だから、要・不要とか、優先度とか、一歩間違えると感情論になりがちな業務改善界隈も、「法令に則るなら、これは仕事ではない」と整理しやすい一面もあります。言い訳が立ちやすいというか。

(それでも言い方次第、タイミング次第、環境次第な面もありますよね。難しいですね。)

 

今回は、PTAや同窓会等の任意団体の事務は、教職員の仕事ではないことについて、根拠とともに整理します。

 

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実は60年前に、答えは出ていた

地方公務員法実例判例集(昭和42年版)です。

国会図書館のデジタルコレクションで見ることができます。

地方公務員法実例判例集 昭和42年刊 - 国立国会図書館デジタルコレクション

 

「職員がPTA等の業務を行った場合に時間外勤務手当を支給できるか」という照会に対して、昭和39年1月20日に、自治省給与課長から熊本県教育委員会教育長への回答です。

地方公務員法実例判例集(昭和42年版)

以下、転記します。

【照会】

地方公務員法第35条に反した場合、または同義務免除の承認を受けても他から報酬を受ける場合は給与減額をしなければならないということを伺いましたが、同条にいう「当該地方公共団体がなすべき責を有する職務」の中に、県立学校におけるPTA、同窓会等の外郭団体の業務は含まれるかどうか伺います。この場合において、

(1)若し含まれるとした場合、団体費業務専任者が残勤した場合に、超過勤務手当の支給ができるか。

(2)団体費から手当が若干支給されている場合はどうか。

(3)団体費雇用職員があって、他の県事務の補助に従事している場合はどうか。

【回答】

具体的事情が明らかではないが、一般にPTA、同窓会など任意団体の事務は地方公務員法第35条に規定する「地方公共団体がなすべき責を有する職務」には含まれないと解されるので、地方公共団体の職員が正規の勤務時間外に、当該任意団体の事務に従事しても、これに対し時間外勤務手当を支給することはできない。また、地方公共団体の職員でない限り、給与は支給できない。

※句読点等、読みやすいように一部改変。

 

地方公共団体がなすべき責を有する職務には含まれない」って思いっきり書いてあるね!

地方公務員法第35条っていうのは「職務専念義務」についてだね。

 

2006年、中教審「教員の職務について」

2006年11月に、中教審の教職員給与の在り方に関するワーキンググループで、「教員の職務について」の整理がされています。

資料5 教員の職務について:文部科学省

「職務」は、「校務」のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割である(具体的には、児童生徒の教育のほか、教務、生徒指導又は会計等の事務、あるいは時間外勤務としての非常災害時における業務等がある。)

「校務」とは、学校の仕事全体を指すものであり、学校の仕事全体とは、学校がその目的である教育事業を遂行するため必要とされるすべての仕事であって、その具体的な範囲は、

1.教育課程に基づく学習指導などの教育活動に関する面

2.学校の施設設備、教材教具に関する面

3.文書作成処理や人事管理事務や会計事務などの学校の内部事務に関する面

4.教育委員会などの行政機関やPTA、社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面

等がある。

なお、職務の遂行中又はそれに付随する行為の際の負傷は、公務上の災害として補償が行われる。

※読みやすいように文中太字、一部改行の改変してます。

 

学校の仕事というのは実に広範囲にわたるものですが、ひとまず今回は「PTAや同窓会等の事務について」に絞ってみてみます。

 

関係ありそうなのは、「4. 教育委員会などの行政機関やPTA、社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面」ですが、あくまで「渉外」の位置付けです。

学校はPTAと連絡調整が必要な場合の渉外は教員としての職務に入ります。

例えば、PTAが教室を借りたい場合の窓口、学校がお手伝いをお願いしたい時の依頼、学校とPTAの会議等の打ち合わせなんかが該当するかと思います。

 

行事等で協働する場合、それぞれの立場で協力しあったり分担することもあろうかと思いますが、それが学校の教育活動の範疇であればPTAとの連絡調整は教員としての職務に該当するでしょうし、学校の教育活動やそれに付随する事務ではないなら、職務ではないということになります。

実際の線引きは、管理職の匙加減次第という部分が大きいのでしょうけど、学校行事に直接関係ないPTA主催事業に手伝いで行く場合なんかは、あくまで自主的な活動扱いになりそうです。

 

また、職務ではない場合、それを勤務時間中に行う場合に注意が必要なケースがあります。

勤務時間内で、職務として位置づける場合、特段の問題は無い。一方、職務として位置づけない業務については、職務専念義務の免除のための措置が必要であり、そうでなければ有給休暇を取得して対応する必要がある(場合によっては、兼職・兼業の承認が必要となる。)。また公務遂行性が無いため、「公務災害補償」の対象とならず、別途、事故等のための保険が必要。

 

行事については、校長は、保護者の団体との円滑な関係づくりなどの目的を持って、教職員に参加や協力を依頼するケースが考えられますが、教職員の立場上、上司の依頼は職務命令と同義に捉えられることが考えられます。

 

教職員の休息の確保、長時間労働の是正の面からも、管理職は、きちんと整理をして配慮していく必要がある部分です。

 

しかし、PTA等の団体に関わる事務の代行は、もはや、やりすぎです。

PTAと学校が協力し合うことと、PTAの事務を代行することは、全く別のものだということです。

学校の通常会計事務についても、公会計化されていない場合は、本来、地方自治法に反する*1状態ですので、PTA会費の徴収事務を学校が代行するのは、たとえPTAと契約があったとしても、学校がするべきではない業務です。

 

職務ではないとされている以上、自主的に行なったという整理がされてしまいます。

 

2013年、自治労学校事務協議会の文科省交渉

自治労全日本自治団体労働組合)学校事務協議会が文科省と交渉した記録があります。

◆2013年の交渉記録→政府予算要求2013文科省交渉記録pdf

自治労HP→自治労学校事務協議会 中央行動!

 

これによると、

自治労

5月の初旬にPTA会計をめぐる報道が多々出たが、その際に行った調査結果の状況と、PTA会計により学校運営に係るさまざまな経費が支出されている実態及び、事務職員がその会計処理にあたっていることについての職務専念義務の観点から見解をいただきたい

文科省

PTA会計関係については企画課が引き続き担当しているのでこちらから回答したい。 まず、調査結果は集計中である。
また、事務職員の会計業務従事については、基本的に事務職員の本来の職務に関わるもの以外の業務について勤務時間中に行うことは、地公法第35条違反となるので注意をいただきたい

とされ、事務職員がPTA会計業務に従事することは、地方公務員法第35条違反と明確に示されています。

地方公務員法

(職務に専念する義務) 第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

ということは、PTA会計を勤務時間中に行うなら、「職務専念義務違反」にならないよう、有給休暇を取得して業務を行うか、(承認手続きを経て)兼業届を出して行うか、勤務終了後に自発的行為として行うかの三択です。

 

と言っても、教職員で自ら申し出てPTA会計業務をやっている人なんていません。

仕事だと言われたから、あるいは職務だと思ってやっています。

 

人によっては、これが仕事ではなかっただなんて、びっくりかもしれません。

 

また、職務ではない場合、公務災害補償も、国賠法も対象外になります。

公務災害補償も国賠法も対象外であっても、なんらか事故や事件があった場合、民法上の責任は生じる可能性があります。

もし、知らずに職務だと思ってやっていたのだとしたら、怖いことです。

 

そもそも、学校(校長)が必要だと割り振ってきた仕事が、実は職務ではなく、何かあった時にも公的な補償も何もなく、なんら守られていないなんて、ちょっと信じられないです。

 

聞くところによると、校長先生によっては、損害賠償に備えて個人的に保険に入っておられる方もいるようです。

なんとも、オカシな話です・・。

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

おわりに

「学校の裁量」あるいは「子どものため」という耳障りのいい言葉で、増え続けた業務と、その線引きや責任の所在のあいまいさ、何かあったときは個人に帰す責任の重さに一保護者として驚きます。

 

学校教育について学ぶにつれて、地域やPTA等と学校の親さを感じますが、それ故、引き受けすぎたというか、目の前の利便性を優先しすぎたというか。

そうすることが円滑に進むための方法の一つだったのだろうし、お安い御用だと言える時代もあったのでしょう。

今やもはや少しでも、一つでも仕事を減らしてほしいと思っているでしょうし、当事者すら、どこまでが仕事でそうじゃないのか、分からないまま、やってるんじゃないかなと思われます。

 

公立の小中よりも、高校なんてもう、ひどいもんです。

あっちこっちの連盟の集金を引き受けて徴収してるし、PTA事務は代行どころか、PTA会長の判子まで学校に預けて、事後承認、完全にATM化してます。

学校も利点があるってことですね。

 

私は公立学校のお金に関しては、法令に則り全て公会計化するべきと思っています。

公会計化することで市の予算に一度入ることになり、議会で承認を経る必要があるので、その内容は精選され、プロセスは透明化され、市の事業によらない集金は一掃されるはずです。

法に則るなら、市の歳入にしない現金は学校では扱えない*2のですからね。

 

他にも就学支援等の手続きを今よりずっと簡素化することも可能ですし、未納対応も自治体の債権担当部署の仕事になります。不正や事故事件に巻き込まれるリスクも減ります。

 

なんで公会計化しないんでしょうね?

職員の業務を減らしたり、身を守ることよりも、優先したいことがあるんでしょうか。

 

 

先日、教育新聞で「教員が担う必要ない業務、国や教委が強制的にでも整理を 財務省(教育新聞)」という記事が出ました。

教員の働き方改革を巡り、4月28日に開かれた財政制度等審議会財政制度分科会で、財務省は「教員が担う必要のない業務については、文科省・教委が強制的にでも教員の業務としない整理をするなど、踏み込んだ業務の適正化を行うべき」と指摘し、国や教委主導でスクールソーシャルワーカーや部活動指導員などの外部人材の活用などを加速させるよう促した。

教員が担う必要ない業務、国や教委が強制的にでも整理を 財務省(教育新聞) - Yahoo!ニュース

 

財務省といえば、「お金を搾り取るだけ搾り取って出さない」という悪魔なイメージ←がありますが、ずっと「教員が必要というなら、今やってる無駄なことをまず減らせ」「金が必要というなら、ちゃんとその根拠を示せ」的なことも言っていたんですよね。

 

今回も、

小・中学校教員の勤務時間について「授業以外の時間が多くを占めており、事務・会議や外部対応などの業務は、相対的に教員自身の負担感が高く、やりがいや重要度が低い」と指摘

とか、

「教員に過度な負担を負わせない取り組みを導入・展開することにより、教員を保護する環境を作っていくべき」とし、文科省や教委、学校が一体となり、仕組みづくりを強化するよう求めた。

とか、

教員の業務については、中教審が19年の答申で「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」に分類し、役割分担や内容を見直すよう示されたものの、財務省はさらなる取り組みの一つとして、「教員が担う必要のない業務については、文科省・教委が強制的にでも教員の業務としない整理をするなど、踏み込んだ業務の適正化を行うべき」と強調。

と、遅々として進まない学校の労働環境について、強く踏み込んだ発言をしています。

思ったより悪魔じゃないかも!

 

一部では国の介入に懸念の声もあるようで、それはそれで一理あるとは思うのですが、もう利害が絡みすぎてて、双方ヨシなんてあり得ない状態ですよね。現状を変えるなら、少なくない負荷は必ずかかります。

それを理由に疲弊しきっている現場任せにするのは、利害関係者からの批判を免れるための責任逃れと言われても仕方ないように思います。

 

現場も現場で、危機感の温度差が激しいようでなかなか個人で動いてどうにかするって難しいようです。今なんとか出来ているから大丈夫ってことですかね・・それより目の前の子ども!とか。

ウチの自治体の部活動の地域移行、全中学校のうち、1つだけお試しで今年やってみるんですって。1つだけ。気の遠くなる話です。

 

教員不足も、今なんとか出来ている自治体も、そう遠くない時期に波は押し寄せると思います。

学校の担う業務は多岐に渡りますし、片っ端から整理していかないと間に合いません。

併せて、本来すべきことをせずに業務で個人をリスクに晒すことなんて論外です。

他団体の会計事務を業務から切り離すのは、逆に法令に基づくことになるため、比較的取り組みやすいことかなと思います。

 

大事なものを失う前に。

 

 

ではでは。

ぽにこ

 

☆別な角度から、PTAや同窓会は教職員の所掌事務とは言えないよね?って書いた記事↓↓↓

ponikox.hatenablog.com

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*1:本来、地方自治法210条により、学校の扱うお金は市の歳入に入れる必要があり、同235条4により、市の歳入をしない現金の取り扱いを禁じています。

*2:地方自治法235条4

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