こんにちは、ぽにこです。
今日は義務教育で使われる教科書のおカネについてです。
入学シーズンになると、毎年聞こえてくる声。
2年前の娘の入学時にも思ったけど、教科書が配られる時に渡されるこの封筒のメッセージ、、、なんだか恩着せがましすぎない?
— くみ (@kumi1112) 2022年4月6日
小1に憲法の意義とか分かるはずないし。
もっとこうなんて言うか、普通に「楽しい学校生活が送れますように。教科書大事にしてたくさんお勉強してね」くらいにして欲しい… pic.twitter.com/fa0RxKCHY9
教科書いれてあった大きな紙封筒の裏側にあった文科省のお言葉
— モーリー (@satoyon4_) 2021年4月9日
言ってることは正しいと思うんだけど、なんかモヤモヤするのはなぜなんだろう?? pic.twitter.com/cHppbcjf3A
封筒の全文、転記します。
保護者の皆様へ
お子様のご入学おめでとうございます。
この教科書は、義務教育の児童・生徒に対し、
国が無償で配布しているものです。
この教科書の無償給与制度は、憲法に掲げる義
務教育無償の精神をより広く実現するものとして、
次代を担う子供たちに対し、我が国の繁栄と福祉
に貢献してほしいという国民全体の願いを込めて、
その負担によって実施されています。
一年生として初めて教科書を手にする機会に、
この制度に込められた意義と願いをお子様にお伝
えになり、教科書を大切に使うよう御指導いただ
ければ幸いです。
いやー。モヤモヤ、しますね!!
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教科書代ってどのくらい?
では、「国が無償で配布」している教科書代とは、一体いおいくらなのでしょう。
一般社団法人教科書協会で公表している令和5年度の採択教科書で計算してみました。
- 小学校1年生・・・2,978円
- 小学校2年生・・・3,456円
- 小学校3年生・・・4,798円
- 小学校4年生・・・4,014円
- 小学校5年生・・・5,312円
- 小学校6年生・・・4,570円
- 中学校1年生・・・9,013円
- 中学校2年生・・・3,897円
- 中学校3年生・・・4,416円
※同一教科で、複数社が発行しているため、平均値を表示しています。
※上・下巻発行の場合、同一学年用の場合は合算して、複数学年用の場合は対象学年に振り分けて(3・4年生、上・下の場合、3年生に上、4年生に下)表示しています。
※専用ノートなどの付属品がある場合は含んで表示しています。
※地図帳や、1冊を複数年利用の教科書は、配布学年で表示しています。
思ったよりずっと安いね・・
と感じているのはわたしだけでしょうか・・。
ちなみに教科書に価格が表示されていないのは、教科書の作成時期と価格の決定時期が異なるからです。教科書を作ったあと(10月〜11月に納品が始まる)に、価格が決まる(2月ごろ)のです。
教科書代 vs 保護者負担
子どもを義務教育に通わせると、「義務教育は無償」とは言っても、なんやかんや保護者負担があります。
上記の教科書代と、保護者が負担している副教材等の負担*1を比較してみると、
- 小学校1年生・・・
教科書代2,978円に対して保護者負担156,500円 - 小学校2年生・・・
教科書代3,456円に対して保護者負担72,000円 - 小学校3年生・・・
教科書代4,798円に対して保護者負担83,000円 - 小学校4年生・・・
教科書代4,014円に対して保護者負担90,000円 - 小学校5年生・・・
教科書代5,312円に対して保護者負担97,500円 - 小学校6年生・・・
教科書代4,570円に対して保護者負担125,000円 - 中学校1年生・・・
教科書代9,013円に対して保護者負担232,000円 - 中学校2年生・・・
教科書代3,897円に対して保護者負担144,500円 - 中学校3年生・・・
教科書代4,416円に対して保護者負担170,000円
トータルすると、小中学校9年間で、
教科書代は42,450円に対して、保護者負担額は1,170,500円です。
この保護者負担額には、給食費や制服等の指定物品、修学旅行代を含みますが、いずれも特段の事情がない限り、通常学校に通うことに組み込まれているものです。
学校から徴収される「副教材費」だけに限定してみると、
- 小学校1年生・・・
教科書代2,978円に対して保護者負担10,185円 - 小学校2年生・・・
教科書代3,456円に対して保護者負担8,673円 - 小学校3年生・・・
教科書代4,798円に対して保護者負担10,260円 - 小学校4年生・・・
教科書代4,014円に対して保護者負担9,010円 - 小学校5年生・・・
教科書代5,312円に対して保護者負担13,532円 - 小学校6年生・・・
教科書代4,570円に対して保護者負担14,624円 - 中学校1年生・・・
教科書代9,013円に対して保護者負担22,366円 - 中学校2年生・・・
教科書代3,897円に対して保護者負担12,411円 - 中学校3年生・・・
教科書代4,416円に対して保護者負担11,177円
上記表内の副教材として表示したものは、子どもの学校が、学校徴収金として徴収し、かつ教科が特定できるものだけを抽出したもので、教科が特定できないもの、学校から指定され各自購入し持参するものや斡旋購入品(鍵盤ハーモニカや絵の具、体操着等)は含んでいません。
あの封筒の意味
文科省がコラムを掲載しています。
義務教育諸学校における教科書の無償給与制度の意義を伝える取り組みについては、学校、教育関係者、児童生徒、保護者の方だけでなく、国民全体で教科書無償給与制度の意義の理解を深めるために大変重要なことです。具体的には次のような取り組みが行われています。
文部科学省では、昭和41年から、「義務教育教科書無償給与制度の意義」を裏面に印刷いた紙袋を作成し、小学校等に入学入学する新1年生の教科書をこの紙袋に入れて、子どもたちに直接給与するよう指導しています。
また、毎年、会議や通知等によって、教育委員会や学校等へのこの制度の意義を伝える取り組みが行われるように周知しています。
教科書無償給与制度の意義の理解を深めるためって言ってるね。
毎年、新1年生界隈にざわめきが起きるから、ある意味効果ありだね!
「教科書まつり」を開催してる学校もあるらしい・・
朝日新聞デジタル:「教科書さん」ありがとう - 鳥取 - 地域
また、平成19年度後期教科書(中学生は平成20年度)から、教科書にも、「この教科書は、これらからの日本を担うみなさんへの期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう。」と掲載されるようになっています。
なんだか躍起だね。
教科書の掲載文はまだしも、やっぱりあの封筒の「国が無償で配布」ってところがモヤりポイントだよね。もとは税金だもの。
あとあの色合いもなかなか・・。
とにかく、あれですよ。
こと教科書に限って、無償にしてやってる感がすごい。
「この道路は国および○○県が無償で使わせてあげています」とか
見たことないよね〜
しかしながら、子どもたちだけでなく、学校や教育行政関係者においても、この制度の意義に対する理解が十分でないとの指摘がされております。
したがって、教科用図書の給与は、制度の趣旨を十分徹底させるため、入学式または始業式の当日等において、校長がこの趣旨を説明して直接支給することが適切であるとされているのであります。(下線は原文通り)
文科省は過去、教科書無償制度の廃止をめぐる攻防で受け入れを拒否したっていうから、制度の堅持という意味で啓蒙を重要視しているってこともあるのかもね。
一方で、文科省の根拠は義務教育の無償制の実現というより教科書統制であることに対しての批判もあるみたいよ。
いずれにしても、教科書が国の負担によって無償で給与されているということを、どう受け取ってほしいんでしょうか。
教科書が国民の税金によって無償措置されていることは、低学年などの子どもを除いて通常理解しているはずで、それでもなお「制度の意義に対する理解が十分ではない」とすることの真意はなんなのかなって思います。
教育に関わる金銭や責任については殊更に個人の利益に矮小化して、教育に係る各種法律の立法趣旨や教科書の無償措置制度の意義の理解がないのは、むしろ政府を含めた行政側じゃないのかなって思ったりしますけど。
子どもをダシに間接的に関係者に教育したいのかな?
効果薄〜
教科書供給事業社も辛い?
先述したとおり、義務教育で配布される教科書の価格は一般的な書籍と比べても、その内容や質から考えても、相当安く設定されています。
児童生徒ひとりあたりの平均教科書価格(全教科)は、平成18年時点で小学生3,109円、中学生4,504円。
そこから17年かけて、令和5年現在で小学生4,140円、中学生5,727円と約1,000円程度上がっていますが、教科数も内容(ページ数)も増えていることが要因で、「値上がり」とは言えそうにありません。
こりゃ重いはずだわ・・
公表されてる重さで計算したら小学校は教科書だけで2kg超え、中学校の教科書は5kg超えだった!
他にもノートだのファイルだのワークだの水筒だの体操着だの給食セットだの持って行ってるじゃない。ってかタブレットも!!
筋トレか!
その教科書の受領者である児童・生徒数も激減しています。
文科省が23日に公表した2023年度の調査によりますと、5月1日現在で全国の小学校の児童数は、前の年度より10万2,000人ほど減って約605万人、中学校の生徒数は2万8,000人ほど減って約317万8,000人となり、ともに過去最少となりました。
少子化の影響とみられ、小学校では42年連続、中学校では2年連続の現象となっていて、1年間で公立小中学校合わせて252校が姿を消しました。
教科書の定価は、文科省によって上限が決められ(教科書の定価認可基準)、その範囲内で決められます。なので、ほとんどの教科書が、その上限に近い数字の価格になっています。
原材料費の値上がりや教材の新規開発があっても、規定された上限は超えられないんだね。
それどころか、価格上限は教科書を作ったあとに文科省が決める。いろいろおかしい。
教科書は、教科書発行者から特約供給所(全国53箇所)、取次供給所(2,653箇所)を経由して各学校に届けられます。
教科書発行者から特約供給所には教科書の単価の約15%が手数料として支払われ、そのうち11%が取次供給所に支払われる仕組みのようです。
この15%ってのも特に根拠はないらしいよ。
文科省の予算の積み上げ時の数字をそのまま使ってそのまま慣習へ。
そういうの、好きだよね〜。根拠聞くと「ない」みたいな。
教科書の単価の平均(R5.ぽにこ調べ)は、小学校で411円、中学校で395円ですから、そのうち4%が特約供給所、11%が取次供給所に手数料として配分されると、学校に運んでくれる事業者には1冊あたり小学校で約45円、中学校で約43円が手数料となる計算になります。
多くがその手数料に配送料、倉庫維持費、人件費等が含まれている*2とのことで、期間が限られる非効率性や配送の正確性・迅速性が求められることや、実態として学校業務の範疇の業務まで代理している*3ことなども考慮すると、事業者としては教科書単価と取り扱い数は死活問題で非常に厳しいものであるようです。
仮に1,000人の大規模小学校で計算しても50万くらいかな?
何校か掛け持ちしても、儲からない商売かも。
取り扱いを辞退する業者も増えてて、今すごく減ってるみたいよ。
この「教科書発行者→特約供給所→取次供給所」の仕組みは、教科書を新学期はもちろん転校や災害対応時にも、僻地だろうが離島だろうが、全国隅々まで速やかに届ける上で優秀なシステムのだったようですが、
この教科書の安すぎ問題と少子化の加速によって、供給システムの維持自体が困難になる時がきてもおかしくないかもしれません。
参考:教科書の流通実態に関する調査報告H19-公正取引委員会
参考:令和5年度教科書発行の現状と課題2023-一般社団法人教科書協会
ちなみに、教科書を失くしてしまうなどで新たに教科書を購入したい場合は、各県の教科書販売店に連絡をして購入することになります。販売店は、全国教科書供給協会のHP↓から、お住まいの都道府県をクリックすると取次店の場所や連絡先がわかります。
一般社団法人 全国教科書供給協会HP(教科書の購入・販売についてのお問い合わせ)
教科書のデジタル化
教科書のデジタル化についてはどうなんでしょう?
今年(2024年)から、本格導入するとかいう話もあります。
え?本当?現実味がないね。
確かに。実現するのだろうか・・。
現在、子どもの学校(中学校)では英語のみデジタル教材が無償配布*4されています。
教科書をそのままに、単語練習や音声確認、小テストのようなものができるコンテンツに飛べるボタン(赤丸のとこ)が貼り付けられています。あと、拡大すると(お年頃なもので)、もとのテキストはだいぶボヤけて「あちゃー」という感じです・・。
実際の授業ではほぼ使ってないよ。
あらら。
デジタル化の道は遠そうだのう・・
さて、デジタル教科書の価格についてですが、令和2年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」)によると、現状のデジタル教科書の市場価格は、5教科平均で911円に対し、紙の教科書の5教科平均が667円と、デジタル教科書の方が割高な状況だと説明されています。
文科省(と教科書界隈やシステム界隈)には、知見や経験、エビデンスが不足しているようで、ひとまず導入時(実証研究時?)には、紙の教科書と併用前提でデジタル教科書の単価×人数で予算計上していくようですが、同レビューで、一般の電子書籍は紙の書籍よりも安いことや書籍と同様の単価計算が妥当なのか、併用なら膨大な費用がかかることなどが指摘されていましたので、今後、また変わってくるのでしょう。
令和2年度秋の年次公開検証(「秋のレビュー」)(4日目)教育現場のオンライン化の推進 令和2年11月15日(議事録)
では、そのデジタル教科書の費用は、今までの紙の教科書同様、国が負担するのかという点について。
いろんな資料をつまみ食いして読みましたが、いまいち定まっていない印象です。
デジタル教科書の価格同様、2024年から本格導入を見据えての実証研究や検証を踏まえ、どのように導入していくかを見極めていくようで、決定はしていないながら、方向としては国費負担になりそうな印象ではあります。(検証中は国費負担で、という方が近いかもしれません)
ちなみに居住自治体では、副教材(ある教科の資料)をデジタルで導入している中学校がありますが、紙の資料と価格は同額で、保護者負担でした。
今、うちの市の教育委員会は、市内全体で保護者負担の軽減に向けて見直しを進めていいて、そのためにデジタル教材の活用も検討されているようです。
国が検討しているデジタル教科書の状況や、他の中学校で導入しているデジタル教材のことなどを考えると、どの程度導入がすすみ、保護者負担の軽減につながるのかは未知数です。
先生の研修もあんまり進んでないみたい。
忙しすぎるからのう。余裕はなかろう。
おわりに
はーーー。
昨今の政治界隈の体たらくも合わさって、暗い気持ちになってきました。
保護者の皆様へ
お子様のご入学おめでとうございます。
この教科書は、義務教育の児童・生徒に対し、
国が無償で配布しているものです。
この教科書の無償給与制度は、憲法に掲げる義
務教育無償の精神をより広く実現するものとして、
次代を担う子供たちに対し、我が国の繁栄と福祉
に貢献してほしいという国民全体の願いを込めて、
その負担によって実施されています。
一年生として初めて教科書を手にする機会に、
この制度に込められた意義と願いをお子様にお伝
えになり、教科書を大切に使うよう御指導いただ
ければ幸いです。
僭越ながら、わたくしから。
憲法に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するよう、児童生徒ひとりあたり4,5千円程度の教科書のみならず、国が内容を示し、自治体が実施する教育に不可欠だと請求されるあれやこれやを軽減するための制度、次代を担う子供たちが、将来、国の繁栄と福祉に寄与できるよう十分な教育の提供、機会の確保は、国の責務であり自治体の責務であると、制度に込められた意義と願いを、自ら省み、同僚や政治家たちに働きかけ、ご指導いただけると幸いです。
ぽにこ
あ、あと、教科書を無償給与する法案を審議してるときの審議の議事録載せておきますね!
教科用図書の給与に関する法律案 ○昭和26年3月19日衆議院 文部委員会
○政府委員(辻田力君)憲法に定められておりまする義務教育の無償をできるだけ早く広範囲に実現いたしたいということは、政府としての根本的な考え方でございます。併しこれは国力と見合わなければならんことは当然でございますが、現在では御承知の通り国庫補助の面における義務教育につきましては、授業料をとらないという形で無償ということになつております。で、我々のほうでは普通の生活のための費用以外の、要するに義務教育を教育として実施する場合に必要な経費はこれは公共のほうから出しまして、義務教育を受ける立場からはこれは無償とすることといたしたいというふうな理想を持つておるわけでございます。即ちその内容といたしましては、現在は授業料でございますが、そのほかに教科書とそれから学用品、学校給食費というふうな、なおできれば交通費というふうなことも考えておりますが、それらを一時に全部やるということは到底現在の財政上ではできませんので、止むを得ず今回は教科書、而もそれも一部分だけ実施するという試みにして、その結果によつて又次の飛躍を期するというふうに考えておる次第でございます。
第10回国会 参議院 文部委員会 第22号 昭和26年3月19日 | テキスト表示 | 国会会議録検索システム シンプル表示
この理想、どこ行った?
いつの間にか↓
ってか、マジで、年少扶養控除返してくんないかなー。
15歳以下の生活費は課税された上に、消費税も取られて、挙句に義務を課されてる義務教育にかかる費用の親の負担(もちろん消費税も!)よ・・。
ちなみに、教科書は非課税な*5。保護者が負担する副教材や指定物品は課税対象。
No.6233 学校の授業料や入学検定料、教科用図書の譲渡など|国税庁
年少扶養控除廃止して、代わりの児童手当配っても税金で持ってかれるから実質受け取れる額はわずかだし貰えてない人もいて、結果的に増税になってる家庭がほとんど。
義務教育でこんなに負担させるなら、税金取らないでほしいわ。
って、教科書代でドヤられても、原資は税金だし、控除も取り上げられて、税金も上がってるんだから、教科書代以上に払っとるわ。
せめて、学校にかかる教育費は非課税。
いや、やっぱり税金取らんといて〜
ではでは。
ぽにこ